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ビジョン検討会が報告書、医師数の増加に否定的な見解

ビジョン検討会が報告書、医師数の増加に否定的な見解

【厚労省・医師の働き方ビジョン検討会】
強制力のある偏在対策示さず

 厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」は4月6日、報告書をまとめるとともに、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」を発表した。報告書は、医師が本来行うべき業務に注力できる環境整備を進めるための具体的方策を提言し、それを着実に実施することで、医師数を増やす必要がない環境をつくることが重要とする立場を示した。また、医師の偏在対策については、医師の自主性を重んじ、地域が主体的に関与することが必要と強調。強制力をもった偏在対策には否定的な考えを示した。
 今後、厚労省内に「ビジョン実行推進本部」を設置し、5~ 10年程度の政策工程表を作成。政府方針として進捗管理を行う。医師偏在対策の制度改正案を速やかにまとめ、医師需給推計を行った上で、2020年度以降の医学部定員のあり方に着手する方針を示した。
 同検討会は、医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、新たな医療のあり方とそれを踏まえ医師の働き方などの骨太な方向を示すために設置された。報告書では、医療のあるべき姿を描き、それを実現すれば、医療は「高生産性・高付加価値」構造となり、その結果、「医師が高い専門性をもって本来医師が行うべき業務に注力できる環境整備につながる」との道筋を示した。
 具体的な方策としては、①医療機関の人材・労務マネジメント体制の確立②地域医療支援センターの実効性向上③プライマリ・ケアの確立④タスク・シフティング/タスク・シェアリング⑤ AI 等のICT の活用などをあげた。
 その上で、これらの方策を確実に実施すれば、「必ずしも医師を増加させずとも、高齢化を踏まえた患者の多様なニーズにも応えられる」としている。
 一方、医師を対象に実施した意向調査では、都市に勤務する医師の44%が今後、地方で勤務する意思があると回答。地方で勤務する意思のない20代医師の理由としては、「労働環境への不安」が最も多い回答だった。結果を分析した井元清哉・東大教授は労働環境の改善等が医師偏在対策になる可能性があると指摘している。
 ビジョン検討会は、強制的手段による医師偏在対策に否定的な見方を示し、医師のモチベーションを引き出す方策を講じるべきとしているが、現状の医師偏在の改善にどれだけの実効性があるのか疑問の残る内容となっている。
 全日病は、検討会の報告書に対し下記の通りコメントを発表した。

 「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」に対しての全日本病院協会のコメント 2017年4月7日

 わが国の医療を改めて社会と有機的に連動するものとして、社会の変化に変容し、また、患者・住民の価値観ばかりではなく、医療従事者の働き方に対応したパラダイムシフトの必要性にまで言及した報告書を高く評価する。
 2016年12月に実施された働き方実態調査で医師の過重労働・超過勤務問題は改めて指摘された。この解決策として、「住民・患者にとって必要な機能を地域ごとにどう確保するか」という視点に立ったプライマリ・ケア医の養成、地域医療支援センターの活用、タスク・シフティング/タスク・シェアリングやAI 等のICT 技術の活用をあげるが、これらの実効性を検証することなく、「あえて医師数を増やす必要がない環境を作り上げていく」と直線的に結論づけていることに対して疑問を感じる。
 全日本病院協会は、医師、医療職、そして診療科の地理的偏在対策の実行を最優先とすべき課題と考えている。
 実効性が期待されるとしても、結果がでるまでの期間の医療に、停滞は許されてはならない。少なくとも、当分の間の医師養成は強化されるべきである。
 また、本報告書では、医療と介護の連携、プライマリ・ケアの充実を社会のニーズとして、重要視している。これからの日本は総力戦での医療対応が必須であり、現在すでにプライマリ・ケアの担い手である、地域と密着する中小病院の医師が、かかりつけ医として除外されてはならないことを明記すべきである。
 これまで、政府報告書で触れることが少なかった外来医療におけるアウトカム評価と医療費定額払い制度、リフィル処方、PA(Physician Assistant)の創設、DtoD、DtoP の遠隔医療などが触れられている。これらについて、プロフェッショナル・オートノミーのもと、しっかりした議論の場の設定が求められる。
 以上、本報告書を踏まえた今後の対応に一面的な視点ではなく、本報告書の根底にある多面的、全体最適を目指した具体的議論の開始を強く望む。

 

全日病ニュース2017年4月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 構成員が様々な医師偏在対策を提案|第886回/2017年1月1日・15日 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170101/news15.html

    2017年1月1日 ... 働き方ビジョン検討会の議題に「医師偏在対策」が加わったため、構成員から偏在対策
    の提案が行われている。 同日は、鈴木英敬構成 ... の結果を厚労省が説明。それを受け
    、具体的な施策を含めた議論を行い、年度内に報告書をまとめる。

  • [2] 第893回/2017年5月1日号 ヘッドライン:全日病ニュース:全日病の ...

    http://ajha.or.jp/news/summary/20170501.html

    2017年5月1日 ... ... 月前以前は紙面PDFを無料でご覧頂けます。全日病会員の方は、最新号まですべて
    の紙面PDFがご覧頂けます。 ... 資料> 「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師
    等の働き方ビジョン検討会報告書から. <医療・介護の意見交換>

  • [3] 医療機関の管理者権限の明記で反対意見|第886回/2017年1月1日

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170101/news07.html

    2017年1月1日 ... また、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」に対し
    ても、厳しい指摘が多く出た。 大学附属 ... 今回、厚労省は「大学附属病院等の
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