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介護保険と高齢者ケア

国際医療福祉大学医療経営管理学科 高橋泰


((1)サービス業化、(2)定量化、(3)情報化、という3つのキーワードをもとに介護保険の解説を行う。また、2006年より本格的にはじまる、介護予防について解説を加える。

1. 介護保険を理解する3つのキーワード

1.1. サービス業化

 2000年3月31日までの高齢者の社会的支援は"措置制度"のもとに行われていた。例えば、寝たきり状態のAさんの家族がAさんのための訪問入浴を希望 する場合、Aさんの家族は、まず町の役所に訪問入浴(措置)の申請を行なわなければならない。申請に基づき役所は審査を行い、自治体の長が措置の承認を行う。承認がおりると続いて役所は、Bという業者に「Aさんのお宅に週1回訪問を行う」という業務を委託(発注)する。このように2000年3月31日までは、お役所が取りしきる形でサービスの提供が行われてきた。
 2000年4月1日よりスタートした介護保険では、利用者はまず要介護認定でサービスを利用できる額(権利)を確保し、自ら利用する業者をケアマネジャーと相談しながら決める。介護保険の開始により「役所が決めるサービス」から、「利用者が自ら選択するサービス」へと高齢者ケアの大きな変換が行われた。見方を変えれば高齢者ケアのサービス業化と言える。


A."施し"から"権利"へ

 毎月「介護保険」の保険料を徴収されるようになると、介護サービスを利用するのは当然の権利と感じるようになる。"施し"から"当然の権利"に変わることにより、ケアがサービス化され、サービスを使うときの抵抗感がかなり緩和される。


B.利用者のコスト意識の目覚め

 介護保険が始まると所得水準とは関係無く1割を自己負担することになる。利用者に経済的なインセンティブが働き、「家事は家事ヘルパー、看護婦さんは医療サービスだけ」という使い分けが行われるようになる。


ケアマネジャーの活躍

 ケアマネージャーの第一の仕事は、「課題分析(アセスメント)」を行うことである。
 ケアマネージャーの第二の仕事は、アセスメント結果をもとに、介護サービス計画案(ケアプラン)を作ることである。これは家族構成、住環境、予算などの種々の条件を考慮しながら、高齢者の機能レベル低下などの問題点を補うサービスを選定する業務である。この仕事が上手く行けば、利用者の望んだ(あるいは望み以上の)サービスが提供されることになり、「サービス業化」という介護保険の利点が最大限に生かされることになる。
 ケアマネージャーの第三の仕事は、介護サービス計画に従って「サービスの供給者」と「サービスを必要としている高齢者」を結び付けるサービス提供のコーディネーションを行なうことである。

1.2. 定量化(制度の透明化)

 要介護認定は、あらかじめ判定基準を作成し、申請があった方の状態が判定基準のどのレベルに該当するかを決める作業である。このような作業を「手のかかり具合の定量化」といい、2000年4月1日から全国統一の物差しの判定結果に従い、お金の配分額が決まるようになった。要介護認定により措置制度よりも サービス利用の基準が明確になり、サービス提供レベルの地域間格差も小さくなる。
 住民が介護サービスの利用を希望場合、まず要介護区分認定の申請を行う。申請をした各家に調査員が訪問し、1次判定の質問に対する判 定を行う。その結果を判定プログラムにかけるとコンピュータが「この人は要介護度3、この人は要支援」という形で1次判定結果を出してくる。1次判定の結 果と掛かりつけ医からの意見書を合わせて2次審査が行われ、最終的な要介護区分が決められる。

1.3. 情報化(情報化の波が高齢者ケアにも

A.コンピュータ無しでは考えられない仕事に

 介護保険が始まり、国、地方自治体、現場の各段階でコンピュータ化が進んだ。まず全国的な巨大なシステムを利用して保険料が徴収される。要介護度認定の1 次判定も、コンピュータで行われる。
 ケアマネジャーがケアプラン作成する時、お金の計算が複雑であり、コンピュータが活躍する。特に質の高いケアプランを作成しようとすると、サービスを入れ替え、いくつかの案を作成するシミュレーションが必要だ。ケアプラン作成後の書類作成や実績管理も膨大な作業であり、コンピュータが不可欠だ。


 サービス提供の現場で今後急速に広がると予想されるのが、携帯電話にモバイル端末をつなぎ、業務の連絡を行うシステムである。このシステムを利用するとヘルパーがステーションを往復する時間が節減できると同時に、事務作業も大幅に削減される。

2. 介護保険サービスについて

2.1. 介護サービスの内容

 2006年4月より、介護保険で利用できるサービスの内容が大きく変わった。(図1)に、2006年3月までの利用可能なサービス内容と、2006年4月に見直された新メニューの内容を示す。
 2000年の介護保険開始以来、高齢者が介護保険サービスを受けたいと考えた場合、まず要介護度認定を受ける必要が生じ、利用できるサービスの限度額が要介護認定により規定された。しかしその規定額の範囲内ならば、(図1)の左側に示すサービス内容を自由に利用することができた。2006年3月までは、一部を除き、要介護度によるサービスの区別はなかった。
 2006年4月からは、(図1)の右側に示すように、要介護度によって、利用できるサービスの内容が区別されるようになった。すなわち、比較的程度の重い要介護度2以上は、従来とほぼ同様の内容のサービスを受けられるが、要介護度認定の判定結果が軽度の場合、次項で説明できる「介護予防」に向けた“筋肉向上トレーニング”、“食事改善、低栄養予防指導”、“義歯調節や歯磨き指導”などが中心になり、福祉用具の貸与制限のサービスが中心になり、2006年 3月まで利用できた家事や福祉用具貸与は、介護保険のサービスとして原則利用できなくなった。



(図1:2006年3月までと4月以降のサービス内容の変化)

2.2. 介護予防とは

 (図1)に、介護予防の基本的な考え方を示す。ある高齢者が「何もしないと、下側の実線のように機能衰退が進む」とする。このような高齢者に対し、機能が落ちる前になんらかの介入を行い、機能推移のコースを上側の実線のように変えるような取り組みを介護予防という。
 2006年4月から介護保険は、軽度の人に対し、できないことを補うという視点から、介護予防により自分できる範囲を広げるという方針に大きく舵を切ったといえよう。



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