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「電子カルテの今後」

電子カルテ導入における問題点と今後の課題

(公社)全日本病院協会 医療の質向上委員会委員長
(財)東京都医療保健協会 練馬総合病院院長
飯田修平

情報システム構築の重要性

 変革の時代において、医療制度改革が急速に進む中、医療の質向上や評価をし、電子請求やDPCへの対応等をするためには、情報技術の活用が必須である。一方で、情報投資に見合った成果を得られなければ、病院の存続を左右することになるなど、情報システム構築は極めて重要な経営課題である。そこで、医療の質向上委員会では、情報システム構築に関する検討を行っている。

医療におけるe-Japan 構想

 保健医療分野における情報化推進として、厚生労働省は2001年に「情報化に向けてのグランドデザイン」を策定し、2006年には400床以上の病院の6割以上に電子カルテを普及させると公表した。その背景には、e-Japan 構想がある。
  e-Japan 構想とは、国民が情報通信技術を活用できる日本型IT社会の実現を目的に、森首相(当時)が所信表明演説(2000年9月)で掲げた構想である。医療では、下記事項の多くを2005年末までに達成することが目標とされた。

(1)診療報酬制度による医療のIT化の一層の促進
(2)医療機関から審査支払機関に提出されるレセプトの電算化及びオンライン化の推進
(3)審査支払機関から保険者に提出されるレセプトの電算化の実現
(4)レセプトデータ等の有効活用による医療の質の向上
(5)電子カルテの普及促進
(6)遠隔医療の推進
(7)ITを利用した医療情報の連携活用の促進
(8)ユビキタス健康医療の実現
(9)医療機関における管理者層に対するIT教育の促進

病院の情報システム構築の問題点

 現実には、e-Japan構想の計画通りには進捗していない。その理由は、費用対効果が芳しくないからである。すなわち、投入した資金、時間、労力の割に、導入の利点が少ないからである。開発側と医療側共に、相互に不満を持っている。すなわち、開発側が病院の業務を理解していない、システムに業務を合わさなければならない等である。一方では、病院側の目的・方針が不明確、要望が変わる、院内の意見統一がない等である。
 開発や導入が円滑に進まない真の原因は、相互の考え方・慣習・用語・業務を理解する努力をしないからである。

基本要件検討プロジェクトと業務フローモデル開発

 情報システムを円滑に開発あるいは導入するためには、開発側と医療側の相互の意思疎通と、基本要件の検討が急務であると考え、2000年、医療の質向上委員会に「病院情報システム基本要件検討プロジェクト」を設置した。医療側からは、理事長・院長・事務長・情報システム担当者・病院管理研究者が、開発側からは、保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の委員が参画してプロジェクトチームを構成した。これが契機となり、2003年から厚生科学研究費「電子カルテ導入における標準的な業務フローモデルに関する研究」(主任研究者:飯田)を実施している。業務プロセスを可視化し、病院の業務フローモデルを開発し、「電子カルテと業務革新」(2005 篠原出版新社)を出版した。
 医療情報システム導入状況調査に関する調査結果では、部門システムの導入に関しては一定の割合で導入が進んでいるが、オーダエントリシステム、電子カルテシステムへと進むにつれてその導入の割合は低くなる。また、部門システムにおいては業務の効率化に焦点が当てられている一方で、オーダエントリシステム、電子カルテシステムは、効率化のみならず、医療の質向上を目指すことが目的である傾向が見られた。

今後の課題

 運営主体、規模、種別に関わらず、電子カルテの導入には多くの問題がある。病院が利用できるようにするためには、以下の課題がある。

情報システム担当者以外にも理解できることが重要である。分かりやすい「電子カルテ導入の手引き」(仮題)を作成中である。
医療事故や不具合が最も多く、リスクの高い、薬剤部門や手術室内の安全確保の仕組みが必要である。薬剤部門や手術室内の詳細な業務フローモデルを作成中である。
作成した業務フローモデルを基に、医療の質向上及び安全確保の仕組みを検討中である。

結語

 これでよいと満足できる電子カルテは存在しない。しかし、良いシステムができるまで待つことは得策ではない。種々の問題があるとはいえ、院内の情報共有・標準化、患者への情報提供の道具としては極めて有用である。
 変革の時代に対応するためには、本稿で解説した事項を十分検討して、電子カルテを導入することが必要である。

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